「あの…。口呼吸を治したいのですが…。」
~思いつめた男子高校生からの3回の電話。口呼吸外来そして口臭外来
H26、12月の初旬のある日、
「先生、口呼吸の治療希望で高校生から電話がありました。」
クリニックで朝一番の患者さんを治療後、助手の女性が昨日の夕方の電話と、その様子を伝えてくれました。聞けば、その男子高校生は随分と思いつめている様子で今日の夕方にまた連絡下さるとのことでしたので、待っていますと夕方5:00過ぎに例の学生さんから電話がかかってきました。話の内容から、不眠傾向が長く続いているようでした。口呼吸についてはホームページで調べて、症状に思いあたるところがあり、「口呼吸外来」のある当クリニックに連絡してくれたようです。まず相談を受けてみることにしました。
相談にはお母さま同伴で来院して下さいました。12月中旬を過ぎたころで、朝・晩の冷えが身にこたえる頃でした。
その男子高校生のお話では、次のような困った問題を抱えていることがわかりました。
①喉の渇き~特に起床時が激しく、たまに痛みを感じる
②睡眠をしても疲れがとれない
③一日中、疲労感があり、ドライ・アイに悩んでいる
④いつも、けだるく、授業が身に入らない
⑤寒冷時には症状が酷くなるようだ
⑥晴れた日には症状が軽くなり、体が楽になる
口の中をチェックすると、かなり広範囲にプラークが存在し、少し口臭もありました。また歯には、はっきりと歯ぎしりのあとも見受けられました。すべての症状と所見が、口呼吸、特に就寝時のそれが原因であることを疑わせるものばかりでした。
そこで口呼吸をいかに克服するかについて当クリニック取り組み方について説明して、ご家族に受診をお勧めしました。この折には受診なさらないとのことでしたので、「何かあったらいつでも相談してください」という位で帰っていただきました。
12月下旬に再び男子高校生から電話をもらいました。
「先生、眠れないんです…。」
前回の経緯もあり、お母さまから電話をいただきたい旨、伝えましたが、以前にも増して辛そうに感じました。その後、3月に三度その男子高校生とお母さまからお電話をいただき、お会いすることになりました。もちろん口呼吸の克服に向けてのご相談でした。当クリニックの口呼吸改善プログラムに是非取り組んでみたいとの強い決意を確認させていただいたので、ご教示いたしました。
口呼吸を鼻呼吸に変えるということですから、いわば生活習慣の見直しですが、大切なことは何が原因で発症したかです。症状の根底にあるのは不眠のようでしたので、発症した時期とその頃に何があったかを丁寧にたずねていきました。どうも他院での超音波スケーラーによる歯石除去のあたりから睡眠障害が発症しているようでした。私たち、ヒトは哺乳動物で恒温動物ですから、体を冷やす行為はとてもこたえます。
口呼吸は免疫力を低下させることは良く知られていますから、ちょうどひどく免疫力が低下した時期に扁桃部に冷えと口内微生物の感染を同時に受けたことが原因だったようです。ただちに生活習慣の主だったものを原因に則して変えてもらいました。
生活習慣を変える指導
変えた主なものは睡眠のとり方、呼吸の仕方、体操、衣・食・住の注意すべき点、購入いただいた各種グッズの使い方など多岐にわたりました。その男子高校生は「やってみます」とうなずいてくれました。その顔には幾分、安堵の色が見えたように思えて、私も安心しました。そこでお母さまに聞いてみました。最初に連絡いただいてから、本格的にトレーニングを始められるまでは、1ヶ月、その前に悩まれていた期間を考えると数か月を要しての決断だったでしょうから、「よく思いきられましたね」とたずねました。すると、その間家族内で意見がまとまらず、大変だったそうで、決断したのは男子高校生本人の強い決意だったそうです。
1か月後に様子を見たいので再来院を約束して別れたのですが、その前にその男子高校生から電話がありました。内容は授業が大変だから後日連絡して伺いたいとのことでした。体調や学校のことを尋ねると、とても元気になったそうで、明るい声で安心しました。
最初、電話を受けた時は、ひどく思いつめ、その後も中々決断をつけることが難しい程、身心共に疲れ切っていた彼が今日の電話の受け答えは理知的で論理的で明るく、若々しいものでまるで別人のようでした。
口呼吸は体調だけでなく、精神活動にも強く悪影響を及ぼすことを改めて知った症例でした。
また、当外来は現在、口呼吸とも関連が深く、精神活動にも強い影響を及ぼしかねない口臭の問題も同時に追求、解決していきます。
「万病の元」口呼吸、口臭症をあなたも一度、当クリニックでチェックされることを強くお勧めします。